青根温泉に向かう途中、人家のまったくないまっすぐな道沿いに鶯林窯はあった。この名前が示す通り、春になると鶯が鳴くような自然豊かな山間の地である。ついついスピードを出してしまいそうなところなうえに、看板の文字も薄れかかっているので、うっかりすると見過ごしてしまうので注意が必要だ。
龍知さんは、平清水焼窯元、青龍窯4代丹羽良知さんの次男坊として生まれ、幼いときから窯場で働く父親や陶工の仕事を見て育った。日大芸術学部を卒業した後、自然と轆轤を回し、窯場の手伝いをするようになる。やがて窯場は兄が継いで、自分は平成8年県境の山を越えて、この川崎の地に移ってきた。
東北の地で約束事の多い本格的な抹茶碗を作れる作家は少ない。父の良知さんはそれが出来る数少ない作家の一人だ。陶芸に対する「思い」は、人一倍で若い作家の作品展でも精力的に見て歩く。昭和六年生まれの87歳となった現在も現役で、小さいもの、抹茶茶碗を作っている。名品と思われるこれまでの作品を見ると特別繊細な感覚をお持ちなのがわかる。
この「思い」と「繊細な感覚」は龍知さんにも確実に受け継がれているものだろう。微妙なかたちの美しさといい、釉掛けの繊細な趣といい、オリジナルに挑戦する意欲といい、良知さんのDNAを受け継いで深い味わいが出せる作家として、これからの成長が楽しみな一人である。
作品としては青磁、天目、織部釉の主に三種を手がけてきた。訪れたときには裏の山から採ったという土に信楽の白い土を混ぜてつくっているという、試行錯誤中の抹茶碗を見せてくれた。50度くらい下げて焼いたら前はテカテカだったものが、マットないい感じになったと嬉しそうに見せてくれた。白泥が美しい茶碗だったが、今度の展示会ではこの発展形が見られるのだろうか。楽しみだ。

18鶯林窯ブログ

展示ギャラリー

丹羽龍知ブログ

平清水の名品「残雪」とのつながりも感ぜられる新作茶碗を見せながら