手の人が作る小さな器が巻き起こす生活の微風
ここに集まっている作家は、いずれも器を作って売ることを生業として、またそうありたい(正直厳しい世の中だから必ずしもそういかない現実がある)と思っている作家たちである。そうした生活の座が成り立たなくなるとき、東北の風土の特徴を帯びた手づくりの「使える器」も消えてしまう。モダニズムの究極的な姿を呈して、都市的環境はますます均一化の方向を加速している現実。器の世界もすべて頭の人のデザインに基づいて設計された工業製品、ユニフォームになってしまうだろう。そのことの寂しさ。
手づくりの小さな器に込められた特徴ある風土の匂いと作り手の思いが、使う者の心にも微風のようなものを巻き起こし、ささやかながら、命にあふれたほんとうに豊かな生活をしていくための入り口になればと思う。