とうほく陶芸家展 in せんだい 第6回 2019 5/24~26  Tohoku Potters Exhibition in Sendai

新緑が輝く八幡の森に、江戸時代からの伝統と技術を受け継ぐ、あるいは自ら窯を開き作陶を続けてきた東北の陶工たちが集います。     Tohoku potters gather in the sparkling fresh verdure of Hachiman no Mori.

2018年05月

手の人が作る小さな器が巻き起こす生活の微風

昔ながらの器がなかなか売れないのは、和の生活が消えてしまったことにあると誰もがいう。確かにめったに膝を折って食事をすることはなくなった。しかし、だからといってそこで長い間積み上げてきた器のかたちや厚みや重さや色彩の感覚を捨てていいということにはならないと思う。伝統の窯を交えて、この展示会を続けて行く意味のひとつは、そこにある。これまでの器に受け継がれてきた蓄積を大事にしつつ、流行に流される器でなくて、現代の生活に根ざした「使える器」を作り続けて行く、その道筋と環境がこの展示会でのお客様との対面、そして作家同士の交流の中から生まれて来てほしいと願っている。
ここに集まっている作家は、いずれも器を作って売ることを生業として、またそうありたい(正直厳しい世の中だから必ずしもそういかない現実がある)と思っている作家たちである。そうした生活の座が成り立たなくなるとき、東北の風土の特徴を帯びた手づくりの「使える器」も消えてしまう。モダニズムの究極的な姿を呈して、都市的環境はますます均一化の方向を加速している現実。器の世界もすべて頭の人のデザインに基づいて設計された工業製品、ユニフォームになってしまうだろう。そのことの寂しさ。
手づくりの小さな器に込められた特徴ある風土の匂いと作り手の思いが、使う者の心にも微風のようなものを巻き起こし、ささやかながら、命にあふれたほんとうに豊かな生活をしていくための入り口になればと思う。
表紙バック高前田乾隆窯

 

青根温泉に向かう途中、人家のまったくないまっすぐな道沿いに鶯林窯はあった。この名前が示す通り、春になると鶯が鳴くような自然豊かな山間の地である。ついついスピードを出してしまいそうなところなうえに、看板の文字も薄れかかっているので、うっかりすると見過ごしてしまうので注意が必要だ。
龍知さんは、平清水焼窯元、青龍窯4代丹羽良知さんの次男坊として生まれ、幼いときから窯場で働く父親や陶工の仕事を見て育った。日大芸術学部を卒業した後、自然と轆轤を回し、窯場の手伝いをするようになる。やがて窯場は兄が継いで、自分は平成8年県境の山を越えて、この川崎の地に移ってきた。
東北の地で約束事の多い本格的な抹茶碗を作れる作家は少ない。父の良知さんはそれが出来る数少ない作家の一人だ。陶芸に対する「思い」は、人一倍で若い作家の作品展でも精力的に見て歩く。昭和六年生まれの87歳となった現在も現役で、小さいもの、抹茶茶碗を作っている。名品と思われるこれまでの作品を見ると特別繊細な感覚をお持ちなのがわかる。
この「思い」と「繊細な感覚」は龍知さんにも確実に受け継がれているものだろう。微妙なかたちの美しさといい、釉掛けの繊細な趣といい、オリジナルに挑戦する意欲といい、良知さんのDNAを受け継いで深い味わいが出せる作家として、これからの成長が楽しみな一人である。
作品としては青磁、天目、織部釉の主に三種を手がけてきた。訪れたときには裏の山から採ったという土に信楽の白い土を混ぜてつくっているという、試行錯誤中の抹茶碗を見せてくれた。50度くらい下げて焼いたら前はテカテカだったものが、マットないい感じになったと嬉しそうに見せてくれた。白泥が美しい茶碗だったが、今度の展示会ではこの発展形が見られるのだろうか。楽しみだ。

18鶯林窯ブログ

展示ギャラリー

丹羽龍知ブログ

平清水の名品「残雪」とのつながりも感ぜられる新作茶碗を見せながら









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